創立100周年記念 加藤信明社長インタビュー

大正14年(1915年)に台湾バナナの加工卸問屋として創業して以来、100年。
横浜で果物・野菜の老舗として知られる「水信」の3代目社長、加藤信明氏に
これまでの歩みと今後の展望について伺いました。

代表取締役社長
加藤信明

平成23年(2011年)、
第3代取締役社長に就任。

常に時代と共に歩んだ激動の100年を振り返る。

果物・野菜のトップブランド「水信」として守り続けてきた品質とサービス

-100周年を迎えられた今のお気持ちをおきかせください。

この100年の間に、果物・野菜を含む食品の流通業界は大いに変化しました。創業当時はバナナの加工卸問屋としてスタートした家業も、現在ではバナナ以外の果物・野菜の仲卸から小売・飲食まで幅広い業種で事業を展開しております。しかし、どれほど時代が変化しても、決して変わらないものがあります。それは、「品質に対するプライドとお客様へのサービス」です。「水信なら間違いない」と足を運んでくださるお客様の信頼に今後もお応えしてまいりたいと考えております。

また、鮮度やおいしさはもちろんのこと、東日本大震災後の原発事故をきっかけにしたお客様の食の安全への関心の高まりとともに、トレーサビリティーにもこだわった、安心で安全な品をご提供しています。

今後は各店舗スタッフとして野菜・果物のソムリエ資格者を置き、生食のできる野菜に特化した品揃えや、地方の希少品種の魅力をお伝えしたり、地元神奈川の産物を深く掘り起こしたご紹介を行なったりするなど、他の店舗にない水信ならではの品揃えとサービスで、魅力ある店舗づくりを進めていきたいと考えています。

将来にわたり発展・成長する企業を目指し、人づくり、仕組みづくりに力をいれていきたい

-3代目社長として、加藤信明社長が大切にしていることを教えてください。

私が横浜水信の代表取締役に就いた2001年頃は、テナント店舗を閉店したり、仲卸業が廃止になったりと、世の中の不景気ともに会社も縮小余儀なくされていた時期で、店舗の閉鎖の仕事は本当に大変なものでした。

店舗や部門がなくなれば、そこにいる社員の仕事もなくなります。しかし、水信では仲卸部にいた社員を小売りや飲食部門に配置するなど、流動的な人事を行うことで、そのまま働き続けてもらっています。 一つの部門で専門的なスキルを磨くことも大切ですが、他部門で得たスキルを新しい部門で生かす事こそ、会社の大きな力になっていると感じています。

水信が100年という永きにわたって商売を続けてこられた陰には、社員の大きな力がありました。これからの100年を刻むためにも、一番の肝になるのは「人づくり」です。
特に若い社員はもっと外に出てお客様のニーズを体感し、社内にフィードバックして欲しいですし、そのためにも、社員が自由に働きやすい会社の仕組みづくりを進めていくつもりです。

祖父の代から培ってきた誠実さと信用。それが「水信」の原点です

-加藤社長の「信明」というお名前は、初代社長からいただいたものだそうですね。

はい。私の「信明」という名前は、「水信」の創業者である祖父の名前をもらったもの。商人として尊敬する祖父にあやかってつけてもらった大切な名前です。

父・明は家業を継いですぐに祖父の信明を亡くし、商売に関して手ほどきをうけることはありませんでした。横浜大空襲で全てが灰になった後、地方の得意先を回っていく先々で、信用と誠実を大切にしていた祖父の「商人としての大きさ」を知り、積み上げられてきた徳に後押しされたからこそ順調に仕事ができたのだと言います。

商売で大切なのは、誠実さと信用。それを父は「因果応報」という言葉で、戒めとして教えてくれました。「人に後ろ指を指されるような商売をすれば、いつか必ず報いがある」。たとえ自分にかえって来なくても、自分の子、孫の代にツケをまわしてしまうのだと。

父は新規出店などの際はいつも同業者との競合を避けていました。それは自分のポリシーを曲げない父の誠実さであったと思います。

これからの100年も「水信」がこだわり続けている品質やサービス力を生かし、より積極的に社会に貢献してまいります

-今後の100年にむけてお考えになっていることを教えてください。

水信が100周年というメモリアルを迎えることができたのも、祖父と父、そして長きに亘って水信を支えてきた前社長、関谷氏の積み上げてきたもの、さらにお取引先様やお客様、社員をはじめ会社に関わって下さっているすべての方のご支援があったからこそと思うと、感謝に堪えません。

そしてこれからの水信の100年をつないでいくために、代表という任をいただいた私が、これまでの信用と誠実をさらに厚く積み上げるとともに、小売の経験を生かして業界に貢献すべく、新たなチャレンジをして行くことを固く決意しています。

今後とも、皆様の変わらぬご支援とご愛顧をお願い申し上げます。